伝記映画だから最後に電気(エレキ)に繋ぐの?『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』

近松佐左衛門の哀しき百円名盤CD
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伝記映画だから最後に電気(エレキ)に繋ぐの?『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』
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今回の100円CDは、ボブ・ディランが1964年にリリースした4枚目のアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』です。2025年公開の伝記映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の話題をきっかけに、ディランの奥深い世界を改めて掘り下げました。

主演のティモシー・シャラメが自ら歌唱を披露しているこの映画、音楽のクオリティがめちゃくちゃ高かったそうです。近松さんは、60歳以上のシニア割引を使って吉祥寺で鑑賞したらしいんだけど、ファンとしてはコンサートに行った時と同じように「分かっているようで分かっていなかった」という「複雑かつ新鮮な感動を味わったみたいです。特に、大音量でディランの「詩」に触れることで、これまでの解釈がガラッと変わるような体験をしたのが大きかったようです。

紹介されたアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』は、ディランがロックへ転向する直前の、いわば「端境期」の作品だと思われがち。でも、実は名曲揃いの超重要盤なんだ。例えば、8曲目の「マイ・バック・ページズ」。ザ・バーズによるフォーク・ロックなカバーも有名だけど、近松さんの一押しはジャズ・ピアニスト、キース・ジャレットによるピアノ・カバー。これがディランの持つ「歌心」を一番見事に表現している、と熱く語っています。

さらに話題は、2016年のノーベル文学賞へと広がる。授賞式を欠席したディランの代わりに「激しい雨が降る」を歌ったパティ・スミスのパフォーマンスが、実はディランの文学性を理解する大きな鍵になると言っています。ここで注目すべきは、「Hard」という言葉の解釈。歌詞の中で繰り返される「It’s a hard…」を、単なる雨の「激しさ」だけでなく、旅する若者が経験してきた「辛く、苦しく、厳しい」道のりそのものとして捉えると、日本語の訳詞としてもスッと腑に落ちるんだっていうことなんかしちゃったりして。

この言葉の深さを説明するために、ちょっとした「英語の歴史」の話も。11世紀のノルマン・コンクエスト以降、英語は「シンプルなアングロサクソン系」と「インテリなフランス語・ラテン語系」が混ざり合った二重構造の言語になった。英語史とかでよくでてくるよね。「ディランはあえてゲット・リッド・オブ(get rid of)のような単純な言葉を組み合わせることで、かえって一言では言い表せない重層的なニュアンスを込めている」というように、フォーク時代のディランが、いかにシンプルかつ深遠な言葉の魔術師だったかということを、映画やYouTube動画を通じて再発見した回でした。

最後は、映画のジャンルが「伝記映画」であることにかけて、「伝記(バイオグラフィー)映画だから最後は電気(エレキ)に繋がると思った?」という、ダジャレを放ってタイトに締めくくりました。今回プレゼントされるCDは、80年代に輸入盤で買われた「ザ・ナイス・プライス」の1枚。100円とは思えないほどの中身の濃い、まさに名盤と呼ぶにふさわしい内容でした。